婦人科疾患/更年期障害/不定愁訴

婦人科疾患と東洋医学

ご存じない方も多いですが、更年期障害や不定愁訴といった婦人科疾患に対して、鍼灸は古来より代表的な治療法でした。
婦人鍼灸(ふじんしんきゅう)とも呼ばれ、伝統的な東洋医学の一部であり、鍼と灸を用いて女性の健康をサポートし、特に婦人疾患や女性の生殖健康に焦点を当てた治療法です。
婦人鍼灸の治療は、女性の生理的なサイクル、生殖器の健康、ホルモンバランス、不妊症、月経不順、更年期障害、妊娠中の不快症状、産後の回復など、女性特有の婦人科疾患に対処するために行われます。気の流れ(気血の流れ)を調整し、体内のバランスを取り戻すことを目的としています。

婦人科疾患について

女性の体は非常に複雑で、特異な組織が備わっており、更に加齢によって様々に変化します。婦人科疾患の多くはホルモンによって管理されており、ホルモンバランスの異常が様々な婦人科疾患の原因になるともいわれています。
女性の社会的役割が増え、加齢だけではなく周囲の環境の変化やストレスなど現代ではさらに複雑な誘因があるとされています。一般的に婦人科疾患とは女性の生殖器官に関連する疾患の総称とされています。代表的な婦人科疾患をご紹介いたします。

婦人病

婦人科疾患と鍼灸整骨院

婦人科疾患

婦人科疾患には色々な症状・病気があります。
一般的に女性は男性に比べ、組織が複雑で加齢やホルモンの働きによって大きく変化していきます。
女性疾患の多くはホルモンとの相関が強く、ホルモンバランスが崩れるとじ婦人科疾患に罹患する可能性が高まる恐れがあります。

東洋医学の考え方

東洋医学では、腎は生殖を主る臓とされています。生殖全般をコントロールするという意味で、ホルモン分泌に深く関わります。下腹部や腰、そして脳に繋がりますので、正にホルモン分泌や生理周期と密接な関りがあると考えられます。
腎が弱ると、足腰が痛んで動かしづらくなり、体全体が弱ったようになります。また脳からのホルモン分泌が上手くいかない為、婦人科疾患として代表的な生理不順や卵巣機能が低下します。
早発閉経や更年期障害、視床下部性の不妊症などは、腎の働きと深い関係があります。また、腎と表裏関係を結ぶ膀胱にも影響が出やすく、頻尿や乏尿、水分代謝異常などが起こりやすくなります。 鍼灸治療で、腎経(腎の経絡)のツボを使用すると、こうした症状を改善して、婦人科疾患に対応することができます。

コラム

更年期障害について

女性は年齢とともに4つのライフステージ(思春期・性成熟期・更年期・ 老年期)を経験します。 個人差はありますが50歳前後の年齢で閉経を迎え、この閉経の時期をはさんだ前後10年間(一般的に45〜55歳頃)を”更年期”といいます。 年齢を重ねるごとに卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することでホルモンのバランスが崩れ、婦人科疾患など心身にさまざまな不調があらわれる人もいます。 ただ、更年期の症状はエストロゲンの減少だけでなく、心理的な要因(仕事や家庭環境など)も複雑に関与するため、個人差が激しく、全身のあらゆる箇所にあらわれます。

更年期障害の代表的な症状

ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など めまい、動悸、胸が締め付けられるような感じ、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさなど 気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠など

更年期障害の代表的な症状

日本人の更年期女性にみられる不定愁訴として肩こりや疲れやすさが多く報告されています。 更年期症状特有ののぼせ、発汗などといった症状も25%以上の女性にみられています。 これをみると、更年期女性はエストロゲンの急激な低下の影響を受け、何らかの形で症状が出ていることがわかります。 更年期障害への鍼灸治療は全身治療により自律神経のバランスを調え、ホルモンバランスを調節して更年期におけるさまざまな症状を緩和していきます。お薬のような副作用がなく、体への負担を心配する必要のない安心・安全な鍼灸を選択肢の一つとしてお考えください。

婦人科疾患の例--多嚢胞性卵巣症候群

卵巣に嚢胞ができる疾患で、月経不順、不妊、体毛過多などの症状が見られます。

多嚢胞性卵巣症候群について

婦人科疾患のうち多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣に多数の小さな嚢胞(卵胞)が形成されることで特徴づけられます。これらの嚢胞は通常の卵胞とは異なり、成熟しないまま卵巣に残り、卵胞が蓄積された状態となります。ホルモンバランスに関連する問題を引き起こし、生殖健康に影響を及ぼすことがあります。

多嚢胞性卵巣症候群の症例

  • 月経不順:不規則な月経周期や長期間の月経不順が見られることがあります。一部の患者では月経が全くないこともあります。
  • 多毛症(Hirsutism):過剰な体毛や顔の毛が生えることがあります。これは男性ホルモンであるテストステロンの過剰な産生に関連しています。
  • 不妊症:排卵の異常や月経不順により、妊娠しにくいことがあります。
  • 皮膚の問題:皮膚の脂漏性皮膚炎、にきび、脂漏性カロリック、黒皮症などの皮膚問題が発生することがあります。
  • 体重増加:一部の患者は体重増加や肥満の傾向があります。

多嚢胞性卵巣症候群の原因は正確にはわかっていませんが、遺伝的要因やホルモンバランスの異常、インスリンが効率的に使われない状態などが関与していると考えられています。多嚢胞性卵巣症候群は、代謝疾患や心血管疾患のリスクを増加させることがあるため、適切な治療や管理が重要とされています。

婦人科疾患の例--子宮筋腫

子宮内の筋肉層にできる良性の腫瘍で、月経過多や下腹部の圧迫感などを引き起こすことがあります。

子宮筋腫について

子宮内に生じる良性の腫瘍で、子宮の筋層から発生します。別名「子宮内膜筋腫」や「子宮腺筋症」とも呼ばれます。子宮筋腫は女性の婦人科疾患の中で非常に一般的で、多くの場合、症状がないか軽度であるため、患者が自覚症状を感じないこともあります。 婦人科疾患のうち子宮筋腫は通常、子宮壁の中または周辺に位置し、組織が腫れているかのように見えます。これらの腫瘍はさまざまな大きさや数で発生し、一つまたは複数の子宮筋腫が同時に存在することがあるとされています。

子宮筋腫の症例

  • 生理不順:月経周期の変化や出血量の増加が生じることがあります。
  • 月経痛:激しい生理痛が出現することがあります。
  • 骨盤痛:骨盤領域の圧迫感や痛みが生じることがあります。
  • 頻尿:子宮筋腫が膀胱に圧力をかけ、頻繁な排尿を引き起こすことがあります。
  • 排尿障害:腫瘍が尿道や膀胱を圧迫し、尿の通りを妨げることがあります。
  • 便秘または腸の圧迫感:大腸に圧力をかけ、便秘や腹部不快感を引き起こすことがあります。

ほとんどの子宮筋腫は良性であり、がんにはならないとされています。ただし、子宮筋腫が大きくなると、症状が悪化し、不快感や生活の質に影響を及ぼすことがあるとも言われています。治療法は症状や腫瘍の大きさによって異なりますがホルモンバランスを整えたり血液やリンパのストレスを減らすことで症状の改善や予防につながるとも考えられています。

婦人科疾患の例--不感症/性交痛

性的な興奮や快感の障害を指し、性交痛、性欲の低下などが含まれます。

不感症/性交痛について

心理的、身体的、または関係に関連する要因が影響を与えることがあります。また、女性ホルモンの減少も一因になると考えられています。

不感症/性交痛の原因

  • 心理的要因:過去の性的トラウマ、ストレス、不安、抑うつ、自己意識過剰など、心理的な問題が不感症の原因となることがあります。
  • 身体的要因:ホルモンバランスの異常、薬物の副作用、疾患(性感染症、甲状腺疾患、神経系の問題など)が不感症を引き起こすことがあります。

エストロゲンの分泌量低下により、膣の萎縮が進んだり、膣粘膜が薄くなりすることも原因といわれています。エストロゲンの分泌量低下は膣内の分泌物も減少するので、乾燥しやすく、これも痛みにつながるとされています。

婦人科疾患の例--女性尿道炎

女性の尿道の炎症で、尿道からの異常な分泌物や尿の刺激を伴うことがあります。

女性尿道炎について

正常な状態ではホルモンの働きにより膣内は適度の湿潤とphで自浄作用が働いています。閉経後やストレスなどで女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏すると、腟粘膜が薄くなって乾燥しやすい萎縮性腟炎の状態になり、腟内のphも異常な状態となり、自浄作用も低下します。すると、それによって雑菌の繁殖を抑える力が低下し、膀胱炎を発症しやすくなるともされています。また、同じくホルモンバランス異常や筋力の低下などによる骨盤臓器脱も女性尿道炎の誘因とも言われています。

女性尿道炎の症例

  • おしっこの痛みや刺激:尿道が炎症を起こすため、尿を排尿する際に痛みや刺激を感じることがあります。
  • 頻尿:尿道炎によって尿意が増加し、頻繁に排尿をすることがあります。
  • 異常な尿:血尿や濁った尿など、異常な尿の色や見た目が現れることがあります。
  • 排尿障害:尿の通りが滞ることがあり、排尿時に苦痛を感じることがあります。
コラム

不定愁訴について

「最近なんだか疲れやすい」
「シャワーを浴びた後に頭がのぼせる」
「動悸や脈拍が早い」
「胸がどきどきして眠れない」
けれど、病院に行って検査をしても、異常が見つからない……。このような症状でお困りではありませんか?
原因が確定できない、つらい症状を総称して「不定愁訴」と呼びます。
不定愁訴には自律神経が関わっており、交感神経と副交感神経のバランスが崩れていることで引き起こされることが多いです。食生活や仕事のストレスなど要因が複雑に絡み合っているため、丁寧にカウンセリングが必要不可欠です。

不定愁訴の改善

更年期障害時期には女性ホルモンの分泌が大きくゆらぎながら減少していき、心身に思いもよらぬ不定愁訴が現れます。 更年期障害の症状を差し、自覚がない状況でも早期のカウンセリングと体のケアが必要になる場合があります。 鍼灸治療は体のバランスを保ち、不安定なホルモンの状況を改善することを目的としていますので、症状改善に向けた取り組みが可能になります。

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